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2024.06.20

【連載】 アーユルヴェーダ的 更年期の迎え方・過ごし方 Vol.1

ホルモンの変化は女性の人生に大きく影響しています。これは女性ならば誰もが感じることでしょう。女性は、一生の中でホルモンの変化を通じて自分の人生の変化に向き合い、自分自身と繊細に向き合っていくことができる存在です。思春期の身体の変化、初潮を迎えた時、妊娠や出産などホルモン分泌の変化に伴って身体も心も変わっていくのを感じます。

更年期は、女性の一生の中でも、心と身体にとって特別な存在です。これまで右肩上がりに増えていたホルモンの活動が、初めて低下傾向になるので戸惑う方が多いのも当然ですが、これまでの人生の生き方を見直し、これからどうやって自分らしい生き方をしていきたいかを改めて問いかけてくれる素晴らしいチャンスなのです。

5000年の歴史を辿るインドの古代伝統医療アーユルヴェーダによれば、閉経は病気でも何でもなく、加齢に伴う自然なプロセスであると位置付けています。多くの方が50歳前後で閉経を迎えますが、それは決して終わりではなくて、新たな始まりなのです。

実は、更年期は、女性の人生の前半の過ごし方の「結果」を表しています。問題は、閉経そのものというよりも、それまでの過ごし方、生活習慣の蓄積からくる影響です。30代、40代で自分に無理をさせてしまい、生活も食事も十分に整えられなかった場合は、その影響が更年期に現れることが多くあります。これはヴァータ(風)、ピッタ(火)、カファ(土)というアーユルヴェーダのドーシャ理論を見ればわかってきます。

ヴァータ(風のエネルギー)の乱れ

忙しくしすぎていた、生活のリズムがバラバラ、消化力を落としてしまう食事をしていた、肉体的にもハードな仕事をしていたなどが多かったり、便秘がちだった方は、更年期には月経サイクルが乱れやすくなり、ヴァータ(風のエネルギー)の乱れである疲労感、不眠、肌や髪の乾燥、抜け毛、腰痛や肩こり、不安症などが更年期症状として顕著に現れる傾向があります。

ピッタ(火のエネルギー)の乱れ

ストレスや心配事、競争、時間との戦いの多い生活をしていた、夜更かしをしていたり、味の濃い食事やお酒・コーヒーを好んでいた、負荷の多い運動をしていた、性活動が多かった方は血量が急に増えたり、サイクルが短縮したり、ホットフラッシュや寝汗、イライラ、肌の炎症などピッタ(火のエネルギー)が乱れることによる症状となって更年期に現れる傾向があります。

カファ(土のエネルギー)の乱れ

重い食事による体重増加、運動不足などが重なった方は、更年期では体全体が重く感じられたり、むくみ、倦怠感、気分の落ち込み、やる気低下などのカファ(土のエネルギー)の乱れとなって更年期に現れる傾向があります。

こういった更年期症状の多くは、それまでの生活習慣の蓄積によって影響されています。もちろん、30代、40代で生活を変え、セルフケアに意識を向けた方は症状が軽く済む方が多くいらっしゃいます。逆に、更年期までに自分を整えることを後回しにしてしまった方は、症状が重くなることが多いように感じます。

しかし、だからと言って落胆することはありません。今からでも整えていけば、これまでの習慣によるダメージを緩和し、ホルモンの変化の時期を穏やかに過ごせるようになります。

加齢による変化を受けて、ホルモンのバランスやタイミングが乱れやすくなっている更年期には、ホルモンが出やすいように自分を労った生活をすることが大切になります。

「生活リズム」と「食事」

ホルモンに大きく関係している「生活リズム」と「食事」を整えていきましょう。 まず、ホルモンは自律神経や脳の働きと深く関係しており、それは生活のリズムによって整えられることが知られています。いつもの寝るタイミングなのに、寝ることができないとホルモンの乱れへと繋がりやすくなります。
アーユルヴェーダでも生活のリズムを非常に大切にしていて、「地球のリズムに合わせて自分の生活リズムを一定にする」ことを推奨しています。

太陽が昇る前に起き、太陽が一番高い昼に1日のメインの食事をし、太陽が沈む時には自分も休息をとり、太陽のない夜の時間は寝る準備に入る。このように起きる時間、運動する時間、食べる時間、セルフケアの時間、寝る時間などのリズムが安定して、規則正しい生活を送っている方は、ドーシャが整って、ホルモンが安定しやすくなったり、変化の影響を受けにくくなります。

次に「人は食なり」と言われるように、ホルモンもまた食事の影響を大きく受けています。アーユルヴェーダでも、「私たちの心と体は食事によってできている」といいます。消化に良い温かい食事が、ホルモンの変化を穏やかにしてくれるでしょう。

瞑想や呼吸法で「脳ケア」

また、「脳のケア」をすることも大切です。排卵と月経の仕組みは、脳と女性臓器がホルモンで連携をして起こるものですが、ホルモンが少なくなってくると、脳は過剰に指令を出したりしてしまうことがあり、それがかえってストレスとなるのです。瞑想や呼吸法によって脳を整えることで、自律神経も整い、乱れがちだったサイクルは穏やかさを取り戻すでしょう。

アーユルヴェーダの代表的なオイルマッサージ

アーユルヴェーダの代表的なセルフケア法であるオイルマッサージも、更年期には非常に効果的です。ホルモンの材料となる成分にコレステロールをはじめとした脂質がありますが、特に更年期では、食事から脂を取るよりもオイルマッサージの経皮によって体内や頭部を潤してあげることで、ホルモンを作る材料が供給され、改善につながる方も多くいらっしゃいます。

「女の人生は50から」と言われますが、更年期は、女性にとってこれからの人生をどのように生きていきたいか、何を大切に過ごしていきたいのかを問いかけてくれる素晴らしい機会です。アーユルヴェーダのセルフケアを取り入れながら、自分をいたわることによって、自分らしい生き方を見つけていくことができるでしょう。

次回のコラムでは、具体的な実践法をお伝えいたします。

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コラム執筆 水野香織

suwaruにおけるアーユルヴェーダ、瞑想講師。
古代伝統医療 アーユルヴェーダの教えを料理を通じて広げている。
アーユルヴェーダ料理教室「Ayurda」代表
(社)日本瞑想協会会長、ニーマルメソッド瞑想認定コーチ。